3行要約
- 豪ニューサウスウェールズ州のクリス・ミンズ首相が7月22日、ABCラジオで連邦のたばこ物品税について「率直に言って高すぎる。再考が必要だ」と与党労働党の方針に異を唱えました
- 豪州の物品税は紙巻き20本入り1箱あたり約30豪ドルに達し、統計局の推計では2025年に消費されたたばこの80%が違法品(2017年は12%)とされています
- 連邦政府は減税に否定的で、水際・国内での摘発強化を優先する構え。世界一高いたばこ税の国で、増税による抑制策そのものが岐路に立っています
「浜辺に立って満ち潮を止めようとしているようなもの」
オーストラリアのたばこ規制強硬路線に、身内から異論が出ました。ニューサウスウェールズ(NSW)州のクリス・ミンズ首相(労働党)は2026年7月22日、ABCラジオの番組で違法たばこ対策について「浜辺に立って満ち潮を止めようとしているような気分になることがある」と語り、「物品税の再考が必要だと思う。とにかく高すぎる」「これは機能していない政策だ」と連邦政府の税制を正面から批判しました。連邦・州の労働党政権の現職首相がたばこ減税論に踏み込むのは異例で、業界誌Tobacco Reporterも「労働党プレミアが造反」と報じています。
背景にあるのは闇市場の急拡大です。AAPの報道によれば、豪州の連邦物品税は紙巻きたばこ20本入り1箱あたり約30豪ドルを占め、番組内では物品税が1箱6豪ドル相当のスウェーデンとの比較も持ち出されました。豪州統計局(ABS)は2025年に国内で消費されたたばこの80%が違法品だったと推計しており、2017年の12%から劇的に跳ね上がっています。
税収は3分の1に、追いつかない摘発
物品税はこの10年で3倍に引き上げられ、合法品の平均価格は1箱50豪ドルに接近する一方、闇市場では同等品が15豪ドル以下で手に入るとされます。その結果、2019/20年度に163億豪ドルでピークを付けた物品税収は、2025/26年度には55億豪ドルまで落ち込む見通しです。違法たばこの利権をめぐっては、犯罪組織による店舗への放火が200件、殺人が少なくとも3件発生したと豪犯罪情報委員会(ACIC)が明らかにしており、単なる「安いたばこ」の問題を超えた治安問題に発展しています。
それでも連邦政府の立場は固く、税関担当のジュリアン・ヒル政務次官は減税ではなく取り締まり強化を優先すると強調。国境警備隊は違法たばこを1日50件以上摘発し、2025年下半期だけで10億本超の密輸紙巻きを差し止めたとしています。シーシャデックスとして注目したいのは、「増税すれば消費は減る」という世界のたばこ規制の大前提が、豪州という最先端の実験場で試されている点です。この議論の行方は、段階増税が進む日本のたばこ税制を眺めるうえでも他人事ではありません。


