ケーシング
けーしんぐCasing
ケーシングは、たばこの製造で、刻む前の葉に糖類や保湿剤などの液を吹きつけたり浸したりする工程です。トップフレーバーより早い段階で行い、水分を保つほか、味の角を丸めて甘さを足す働きがあります。
ケーシング(casing)は、たばこの葉に糖類や保湿剤などの液を与える工程です。紙巻きたばこやパイプたばこの製造で、葉を刻む前に行います。液は、葉の一部または全体に、吹きつけるか浸して与えます。
液の基本は、水、糖類、保湿剤です。ほかに、果物のエキスやはちみつ、ココアやリコリス(甘草)が入ります(Perfumer & Flavorist)。
目的は、水分を保つこと、うまく刻めること、紙巻きたばこを作る機械の調子をよくすることです。味を整える働きもあります。
Perfumer & Flavorist誌の解説は、ケーシングが味に与える働きを5つ挙げています。
- ケーシングは、味の粗い角を丸めます。
- 重いベースノートで、複雑さとふくらみを足します。
- 葉の等級や種類による小さな差を、ならします。
- 甘さを足します。
- その製品らしい個性を、加えることもあります。
材料ごとの役目も説明されています。糖類は、バーレー種のように糖の少ない葉の吸い心地をよくします(R.J.レイノルズ社の欧州特許)。煙のきつさをやわらげる目的でも使われます(Tobacco in Australia)。
同じ特許によると、保湿剤は葉に弾力を与え、香りを安定させます。水も弾力を与えますが、後の工程で抜けるので、保湿剤ほど長持ちしません。
Perfumer & Flavorist誌の表には、ほかの材料も挙がっています。緩和剤(DAP、クエン酸、酒石酸、乳酸)は刺激をやわらげ、クエン酸カリウムは燃焼性を高め、保存料は高温多湿から守ります。これらの材料の多くは、紙巻きたばこの製造で何十年も使われてきた、と同じ解説にあります。
ケーシングは、揮発しにくい材料を、早い段階で与えます。トップフレーバーは、揮発しやすい香料を、仕上げに近い段階で与えます。揮発しやすい香料は、あとで熱をかけると大きく失われるからです(同じ特許)。
液の種類も違います。ケーシングは水を使った液です。トップフレーバーは、アルコールかラムを使った液を、刻んだ葉に吹きつけます(Perfumer & Flavorist)。
同じ特許の説明では、茎や中骨を除いた葉に、加熱の前か加熱と同時にケーシングの液を与えます。加熱で液を葉に封じ、加えた糖をキャラメル化させます。湿ったまま刻んだあとは、もう一度熱をかけて水分を減らす工程が入ります。最後に、乾いて冷めた刻みへトップフレーバーのアルコール液を吹きつけてから、アルコールを飛ばします。
トップフレーバーの側は、トップフレーバリングの項で扱っています。
シーシャのフレーバーは、刻んだ葉に香料、糖蜜、グリセリンを混ぜたものです(CLOUD)。オランダで登録された水たばこ用たばこ249製品では、グリセリンが全製品に入っていました。
ケーシングの材料は、糖類と保湿剤が基本です。R.J.レイノルズ社の欧州特許では、保湿剤にもとはグリセリンが使われていた、とあります。
ケーシングの材料や工程の説明は、紙巻きたばこやパイプたばこの製造の話です。糖蜜はモラセス、グリセリンはグリセリンの項にあります。フレーバーそのものの説明は、マアッスルが詳しいです。
オーストラリアのCancer Council Victoriaの資料は、たばこの吸い心地をよくすると、やめにくくなることがあると書いています。若い人が吸い始めやすくなることもある、という書き方です。ケーシングの糖類は、煙のきつさをやわらげる添加物の例として出てきます。
同じ資料は、糖類はたばこを燃やしたときにアルデヒドやフランなどの熱分解物を作る、と説明しています。その多くは、有害物質や発がん性物質として知られています。オーストラリアでは、2025年7月1日から、国内で売るたばこへの多くの添加物が禁止になりました。禁止には、香料すべてと糖類、メントールなどが含まれます。
ケーシングとは何ですか?
たばこの製造で、刻む前の葉に糖類や保湿剤などの液を与える工程です。吹きつけるか、浸して与えます。
ケーシングは何のために行うのですか?
水分を保つこと、うまく刻めること、機械の調子をよくすることが目的です。味の角を丸め、甘さを足す働きもあります。
ケーシングとトップフレーバーは何が違いますか?
ケーシングは、水を使った液で、揮発しにくい材料を刻む前に与えます。トップフレーバーは、アルコール系の液で、揮発しやすい香料を仕上げに近い段階で吹きつけます。
ケーシングの液には何が入りますか?
基本は水、糖類、保湿剤です。果物のエキスやはちみつ、ココアやリコリスが入ることもあります。
- Perfumer & Flavorist「Tobacco Flavoring: An Overview」(Roger N. Penn、1997年5・6月号。ケーシングとトップフレーバーの定義・目的・材料)
- 欧州特許出願 EP 0 067 601 A1「Tobacco treatment process」(R.J. Reynolds Tobacco Company、1982年。ケーシングの材料と工程の順番)
- Tobacco in Australia「12.6.3 Additives that increase the attractiveness of tobacco products」(Cancer Council Victoria。ケーシングとトップドレッシングの説明)
- CLOUD「シーシャフレーバーの種類と選び方を徹底解説」(シーシャのフレーバーの原料)
- Bakker-'t Hart ほか「Flavours and flavourings in waterpipe products」Tobacco Control 2022(登録された水たばこ用たばこの原料)