
グリセリン
ぐりせりんGlycerin (VG)
グリセリン(グリセロール)は、無色透明でとろりとした液体です。水とよくなじみ、空気中の水分を引き寄せます。水たばこのフレーバーには、しっとり感を保つ保湿剤として配合されます。加熱すると気化して煙の主役にもなるため、煙の量や口あたりを左右する成分です。
- 食品添加物として安全でも、加熱して吸う安全性とは別の話です。 EFSAの評価は、食べる場合のものです。
- グリセリンは、シーシャでは保湿剤であり、煙のもとでもあります。水分を保ち、加熱で気化して煙になります(CLOUD)。
- 「ノンニコチンなら煙も安全」とは言えません。 ニコチンの有無と、煙の成分は別の話です。くわしくはタールの項に書いてあります。
グリセリンとグリセロールは、同じ物質の呼び名です。化学の名前は、1,2,3-プロパントリオールといいます。分子の中に水酸基(-OH)を3つ持つので、「三価アルコール」の仲間です。お酒に入っているエタノールとは別の物質です。
グリセリンは、甘みのあるアルコール類の仲間で、「糖アルコール」とも呼ばれます。水分を引き寄せて逃がしにくい性質があるため、乾燥を防ぐ「保湿剤(ヒューメクタント)」として使われます。
VGは、英語圏で「Vegetable Glycerin」(植物性グリセリン)を略した呼び方です。シーシャでは、フレーバーの成分表示などで見かけます。
公的なデータベースのPubChemでは、グリセリンは無色で粘りのある液体と整理されています。水とどんな割合でも混ざり、空気中の水分を吸い寄せる「吸湿性」があります。融点は約18℃、沸点は約290℃です。この沸点は、分解を伴うものと記されています。
引火点は、火が近づくと燃え出す温度のことです。グリセリンは約177℃(開放式)とされています。ふつうの室温では、燃えにくい液体です。
もともとは油脂の成分で、体の中にも存在する物質です。EFSA(欧州食品安全機関)の評価書によれば、工業的には主に油脂を高圧で分解して作られます。プロペン(石油化学の原料)から合成する方法もあります。
ワインやはちみつなどの食品にも、自然に含まれるものです。EFSAは、自然な摂取源として挙げています。体内では、主に肝臓で代謝されて、エネルギー源になります。
水たばこ用のたばこ葉には、グリセリンが加えられています。Almomenらの論文(2023年)は、導入部で、グリセリン・香料・甘味料を合わせると水たばこ混合物の約70%になると書いています。この数字は、Al-Kazwiniらの2015年の論文を引いたもので、Almomenらが調べた結果ではありません。グリセリンだけの割合ではなく、製品によっても違います。
グリセリンの役割は、大きく3つあります。
- 葉のしっとり感を保ちます(保湿)。水分を抱え込んで、葉が乾いてパサつくのを防ぎます。
- 煙のもとになります。CLOUDは、グリセリンが加熱で気化し、その蒸気が煙になると説明しています。グリセリンなしで作ったフレーバーは、煙がほとんど出ないともしています。
- 香りの運び手になり、煙をなめらかにします。Kassemらのレビュー(2024年)は、保湿剤が香料の溶媒になり、煙をなめらかにするとしています。
グリセリンは、食品添加物としては評価が確立しています。EFSAは2017年の再評価で、食品に使われる量では安全上の懸念はないと結論づけました。1日の摂取許容量を数値で決める必要もない、という結論です。国際的な専門家会議(JECFA)も、1976年に「数値で定める必要なし」としています。
ただし、これは「食べる」場合の評価です。EFSAの評価の範囲は、食品添加物としての使用でした。加熱して吸い込む使い方の安全性を保証するものではありません。
グリセリンは、高温に熱すると分解します。アクロレインなどのカルボニル化合物(アルデヒドの仲間)が生じることが、電子たばこ用の液体を使った実験で報告されています。
Wangら(2017)は、ステンレス製の管に空気を流しながら、最高318℃まで加熱する装置を使いました。アクロレインは、グリセリンを含む液体でのみ、約270℃を超えたところで検出されたと報告しています。この270℃は、実験装置の温度です。シーシャのボウル内の温度とは、直接比べられません。
水たばこについても、実験があります。Almomenら(2023)は、グリセリンの割合を10〜60%に変えた混合物などを調べました。喫煙機を使い、一定の条件(35回の吸引を5サイクル)で吸引しています。
自作の混合物では、どの割合でも、アクロレインの発生がグリセリンの添加と関連していました。市販品では、グリセリン10〜20%で関連が見られました。ただ、20%から60%への増加に応じた増加は、見られませんでした。著者らは、増え方は製品によって異なり、上限を決めるにはさらなる研究が必要だとしています。
アクロレインについて、厚生労働省の職場のあんぜんサイトは、吸入による急性毒性が最も高い区分(区分1)に分類しています。これは物質そのものの分類です。シーシャの煙に含まれる量での影響を示すものではありません。
ここまでは、実験室での結果です。実際の吸い方や、炭・器具の違いでどうなるかは、条件によって変わります。「グリセリン=危険」とも、「食品に使えるから安心」とも、言い切れません。確かなのは、加熱して吸うことを前提にした安全性の評価は、食品の評価とは別物だということです。
- 「煙の正体は水蒸気」とは言い切れません。CLOUDは、煙の大部分は、グリセリンが加熱で蒸気になったものと説明しています。
- 「グリセリンが多いほど良いフレーバー」とは限りません。CLOUDが書いているのは、水分が足りないフレーバーは煙が出にくい、ということまでです。
- 「ノンニコチンなら煙も安全」も、思い込みです。ニコチンを含まないことと、煙そのものの安全性は別の話です。
シーシャのグリセリンとは何ですか?
フレーバーのたばこ葉に加えられる、無色でとろりとした液体です。水分を保って葉の乾燥を防ぎ、加熱されると気化して煙のもとになります。グリセロールとも呼ばれます。
シーシャの煙はグリセリンですか?
主な煙のもとは、加熱で気化したグリセリンだとCLOUDは説明しています。ただ、煙にはたばこ葉やほかの成分に由来する物質も含まれます。
食品に使われるグリセリンなら、吸っても安全ですか?
EFSAの2017年の再評価など、食品添加物としての評価は、食べる場合のものです。加熱して吸い込む場合の安全性を保証するものではありません。高温で分解してアクロレインなどが生じることも、実験で報告されています。
植物性グリセリンと書かれていれば体にいいですか?
示すのは原料が植物油脂であることまでで、健康への影響は別の話です。
ノンニコチンなら、煙も安全ですか?
言えません。ニコチンがないことと、煙の成分は別の話です。くわしくはタールの項に書いてあります。グリセリンの分解物の問題も、ニコチンの有無とは関係ありません。
この語に関連するサイト内のページです。
- ノンニコチンのシーシャは安全?一酸化炭素は残る2026-10-25
- シーシャは紙巻き・加熱式たばこと何が違う?温め方と法律2026-10-25
- ダブルアップルとは?シーシャ定番の味2026-10-12
- PubChem「Glycerol」(NTP・CRC Handbook・ICSC などの物性値を収録)
- EFSA Journal 2017;15(3):4720「Re-evaluation of glycerol (E 422) as a food additive」
- Wang et al. (2017) PLoS ONE 12(1): e0169811「A Device-Independent Evaluation of Carbonyl Emissions from Heated Electronic Cigarette Solvents」
- Almomen et al. (2023) BMC Public Health 23:1858「Effect of glycerol concentration on levels of toxicants emissions from water-pipe tobacco smoking」
- Kassem et al. (2024) Toxicological Sciences 201(2):159-173「Toxicity of waterpipe tobacco smoking: the role of flavors, sweeteners, humectants, and charcoal」(保湿剤は香料の溶媒・煙のなめらかさ)
- 厚生労働省 職場のあんぜんサイト「アクロレイン」
- CLOUD MEDIA「シーシャのフレーバーにグリセリンが含まれるメリット」