タール
たーるTar
タールは、たばこの煙のうち、一酸化炭素やガス状の成分を除いた粒子状の成分をまとめた呼び名です。「ヤニ」とも呼ばれます。ひとつの物質の名前ではなく、ニコチンや発がん性物質など多くの化学物質が混ざったものです。シーシャでも、水を通して取り除かれることはありません。
- 水を通してもタールは取れません。 CDCは、フーカーの水は煙をろ過しないと説明しています。FDAも、水は煙から有害な化学物質を取り除かないとしています。
- ノンニコチン・ハーブ系でもタールは出ます。 2012年の吸引機の実験では、タバコ入りの製品とタバコを使わない製品で、有意に違ったのはニコチンだけでした。タールを含む他の項目には、有意な差がありませんでした。
- 「802mg」は何の数字? 吸引機で、決まった吸い方(171回・1回0.53L)をして測った値です。フレーバー10gと速着火の炭1.5枚を使った1回分の煙に含まれる、粒子成分の量です。実際の吸い方では変わります。有害物質だけの量でもありません。
厚生労働省の e-ヘルスネットは、タールを「たばこの煙のうち、一酸化炭素やガス状成分をのぞいた粒子状の成分」と説明しています。燃えるときにできる副生成物のうち、粒になって煙に混ざっているものの総称です。
ヤニは、タールの別名です。e-ヘルスネットの項目名も「タール(たばこのヤニ)」となっています。
「タール」という成分が1つあるのではなく、ニコチンや、ベンゾ[a]ピレンなどの発がん性物質を含む、たくさんの化学物質が混ざったものをまとめて、こう呼んでいます。
煙は「粒子成分」と「ガス成分」に分かれます。タールとニコチンは粒子のほうで、一酸化炭素はガスのほうです。
e-ヘルスネットによると、たばこの煙には、不完全燃焼でできる燃焼副生成物がたくさん含まれています。報告によると、紙巻たばこの煙には化学物質がたくさん含まれます。粒子成分に約4,300種類、ガス成分に約1,000種類です(e-ヘルスネット「たばこの煙と受動喫煙」)。
タールに含まれる代表的な発がん性物質は、同じ解説によると、ベンゾ[a]ピレン、芳香族アミン類、たばこ特異的ニトロソアミン類です。
シーシャは、炭でフレーバーを温めて吸うものです。炭は燃えています。そのため、煙にはタバコ葉から出る成分に加えて、炭の燃焼から出る成分も混ざります。
研究チームは、吸引機を使ってシーシャ1回分の煙を調べました。条件は、フレーバー10g(モラセスのペースト)に速着火の炭1.5枚、吸う動作171回(1回0.53L・2.6秒・間隔17秒)です。この条件の煙から、ニコチン2.94mg、タール802mg、一酸化炭素145mgが測定されています(Shihadeh & Saleh 2005)。
ここでいうタールは、紙巻たばこの測定にならって、煙の粒子成分としてまとめて量った値です。論文も"tar"と引用符つきで示しています。内訳(有害成分とそうでない成分の割合)は、論文の要旨には示されていません。水たばこのフレーバーに多く含まれるグリセリンも、煙の粒になる成分とされています。ただ、802mgのうちどれだけかは示されていません。
タールの値は、この機械の設定で出たものです。実際のお店での吸い方や、銘柄・炭の量が違えば、同じにはなりません。
炭の影響も調べられています。吸引機で、炭と、炭と同じような温度分布をつくる電気ヒーターを比べた実験があります。煙の一酸化炭素の約90%が、炭に由来していました。4〜5環の多環芳香族炭化水素(PAH、燃焼でできる発がん性が疑われる物質群)は75〜92%、ベンゾ[a]ピレンは95%超です(Monzer ほか 2008)。研究者は、ニコチンやタール、ニトロソアミンはタバコ側から移る成分で、炭からは燃焼でできる成分が加わる、と整理しています。
「水を通るからタールは取れる」 と考える人がいます。CDCは、フーカーの水は煙をろ過しないと説明しています。水をくぐったあとの煙にも、有害な成分が高い濃度で残るそうです(CDCのページは2024年10月17日付)。FDAも、水は煙から有害な化学物質を取り除かないとしています(2023年9月6日時点の内容)。CDCの説明では、フーカーの煙にはニコチン、タール、重金属など、紙巻たばこの煙と共通する有害な成分が含まれます。水はフィルターの役目を果たしません。
「ニコチンなし・ハーブ系ならタールも無い」 と考える人もいます。2012年の研究では、31人の吸い方を再現する吸引機で、タバコ入りの製品と、フレーバーを合わせたタバコを使わない製品を比べました。ニコチンの量だけが有意に違い、タールを含む他の項目には有意な差がありませんでした(Shihadeh ほか 2012)。
2015年のレビューも、ニコチンを除けば、タバコを使わない製品の煙の有害成分は同じか、より多いとまとめています。ノンニコチンやハーブ系は、ニコチンの有無の話です。煙の成分が無くなるという意味ではありません。
「ヤニクラ=タールのせい」と考えるのも、よくある誤解です。ニコクラ(ヤニクラ)は体調不良を指す俗称で、医学用語ではありません。名前に「ヤニ」が入っていますが、使われ方や意味は、その項目に書いています。
タールだけを「紙巻1本あたり何倍」と比べるのは、難しい数字です。条件がそろわないからです。タールは、機械が煙を吸う設定(回数・量・時間)で変わります。シーシャ1回は、紙巻1本よりずっと長い時間かけて吸います。
条件がそろった比較としては、2009年の実験室の研究があります。シーシャを最長45分、または紙巻1本を吸った31人で比べています。吸い込んだ煙の総量は、平均48.6L対1.0Lでした。呼気の一酸化炭素の増加は、23.9ppm対2.7ppmです。ppmは100万分の1の濃度の単位です。血中のニコチンの最大値は、ほぼ同じでした(Eissenberg & Shihadeh 2009)。
この研究はタールを測っていません。ただ、吸い込む煙の量が桁違いに多いことは、比べるときに知っておきたい点です。CDCも、フーカーの煙は少なくとも紙巻の煙と同程度に有害だとしています。1回の曝露は、紙巻より大きくなりうるとも言っています。
タールとは何ですか?
たばこの煙のうち、一酸化炭素やガス状の成分を除いた、粒子状の成分の総称です。「ヤニ」とも呼ばれます(厚生労働省 e-ヘルスネット)。ひとつの物質の名前ではありません。ニコチンや発がん性物質を含む、多くの化学物質が混ざったものです。
シーシャは水を通すので、タールは取り除かれますか?
取り除かれません。CDCは、フーカーの水は煙をろ過しないと説明しています。FDAも、水は有害な化学物質を煙から取り除かないとしています。
ノンニコチンのシーシャなら、タールは出ませんか?
出ないとは言えません。吸引機を使った2012年の研究では、タバコ入りの製品とタバコを使わない製品で、有意に違ったのはニコチンだけでした。タールを含む他の測定項目には、有意差がありませんでした。
シーシャのタールは紙巻たばこと比べて多いのですか、少ないのですか?
一律には言えません。タールの値は、機械の吸わせ方(回数・量・時間)で変わるためです。吸引機で決まった条件(171回・1回0.53L、フレーバー10gと炭1.5枚)の1回分を調べた研究があります。粒子成分として、802mgのタールが測定されました。ただ、これは条件つきの値です。ヒトでの比較研究では、吸い込んだ煙の総量は、シーシャ1回(最長45分)で平均48.6L、紙巻1本で1.0Lでした。一酸化炭素も、シーシャのほうが大きく増えていました。
炭を使わない電気のシーシャなら、タールは出ませんか?
炭の代わりに電気ヒーターを使った実験では、一酸化炭素やPAHの大部分が炭に由来していました。一方、ニコチンやタールはタバコ側から移る成分とされています。タバコ葉を温める限り、煙に出ると考えられます。
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- 厚生労働省 e-ヘルスネット「タール」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「主流煙」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「たばこの煙と受動喫煙」
- CDC「Hookahs」(2024年10月17日付。水は煙をろ過しない/ニコチン・タール・重金属)
- FDA「Hookah Tobacco, Shisha, or Waterpipe Tobacco」(2023年9月6日時点。水は有害な化学物質を取り除かない)
- Shihadeh A, Saleh R. 2005. Food Chem Toxicol 43(5):655-661(水たばこの主流煙中のPAH・一酸化炭素・タール・ニコチン)
- Monzer B ほか 2008. Food Chem Toxicol(炭が水たばこ煙の一酸化炭素とPAHの発生源になる)
- Eissenberg T, Shihadeh A. 2009. Am J Prev Med 37(6):518-523(水たばこと紙巻たばこの曝露の直接比較)
- Shihadeh A ほか 2012. Food Chem Toxicol(タバコを使わない水たばこ製品との吸引機による比較)
- Shihadeh A ほか 2015. Tobacco Control(水たばこ煙の成分・性状・生物学的活性のレビュー)
- CLOUD「シーシャの成分とその健康影響:タバコとの比較」