20歳未満の方の閲覧はご遠慮ください。シーシャは適度に楽しみましょう。
標本カード

ニコクラ

にこくらNicokura (Nicotine Dizziness)

店・文化シーシャ本館標本番号: nikokura
定義

ニコクラ(ヤニクラ)は、シーシャやたばこを吸っている最中に起きる、めまい・立ちくらみ・吐き気などの体調不良の俗称です。医学用語ではありません。ニコチンの摂りすぎを指して使われます。ただ、炭を使うシーシャでは、一酸化炭素による症状と見分けがつかないことがあります。感じたらすぐに吸うのをやめて、空気のよい場所で休むのが基本です。

そもそも、どんな言葉?

ニコクラとヤニクラは、どちらも俗称です。

吸っている最中や直後に、頭がくらくらする。立ちくらみがする。気分が悪くなる。そんな状態をまとめて、こう呼びます。ヤニクラは紙巻きたばこの話でも使われますが、意味はニコクラとほぼ同じです。

名前のとおり、原因はニコチンだと考えて使う人が大半です。でも、炭を燃やすシーシャには、もうひとつ原因があります。一酸化炭素(CO)です。

症状が重なるので、本人には区別がつきません。「酸欠」と言われることもあります。ただ、実際に起きているのは、血液が酸素を運ぶ力をCOがじゃましている状態です。くわしくは一酸化炭素に書いてあります。

体の中では何が起きている?

ニコクラは、原因が複数ありうる不調の総称です。疑われる原因は、ニコチンと一酸化炭素です。

ニコチンのほうは、血管を縮めて、血圧を上げます(厚生労働省 e-ヘルスネット)。MSDマニュアルは、心拍数・血圧・呼吸数がわずかに上がると説明しています。初めてニコチンに触れたときは、吐き気も出やすいそうです(MSD Manual Professional)。慣れていない体にいきなり入ると、気持ち悪くなりやすいようです。

一酸化炭素のほうは、CDCが、水たばこの加熱に使う炭が高濃度のCOを出すと説明しています(CDC)。軽いCO中毒の症状は、頭痛・吐き気・めまい・集中力の低下・嘔吐・眠気などです。ニコクラの症状とほとんど同じです(MSDマニュアル家庭版)。

この2つの関係を測った実験があります。米国で、水たばこと紙巻きたばこの両方を吸う54人に、水たばこと紙巻き1本を吸ってもらいました。水たばこは平均43.3分、紙巻きは平均6.1分です。

血しょうニコチン濃度の最高値は、ほぼ同じでした。水たばこが9.8 ng/ml、紙巻きが9.4 ng/mlです。血しょうは血液の液体成分のことです。ng/mlは、その1ミリリットルにあるニコチンの重さで、ngは10億分の1グラムです。

違いが出たのは、COでした。血液中のヘモグロビンのうち、COと結びついた割合をCOHbといいます。この最高値は、水たばこが4.5%、紙巻きが1.2%。水たばこのほうが明らかに高く出ています(Cobbら、2011)。

つまり、この実験で大きく違ったのは、ニコチンの量ではありませんでした。COと煙の量です。「シーシャの不調はニコチンのせい」と決めつけられない理由のひとつです。

実は一酸化炭素かもしれない

東京都は2025年3月、水たばこの安全性調査を公表しました。約10平方メートルの閉鎖空間で水たばこを1台使うと、室内のCO濃度は約300ppmまで上がりました。ppmは100万分の1を表す単位で、300ppmは空気の0.03%です。

これは、1〜2時間で頭痛や吐き気が出る濃度です。同じ空間にいる人も、吸っている本人と同じ危険があるとされています。60分後に扉を開けると、濃度は大きく下がりました(東京都報道発表)。

同じ調査のアンケートもあります。対象は、都内の20歳以上で喫煙等の経験がある1,000人です。CO中毒の危険性を「知らない」と答えた人は、68.8%でした。

医療機関の記録からも、同じ傾向が見えます。ドイツの研究は、水たばこが原因のCO中毒で専門施設に入院した61人を調べました。平均23歳です。よくあった症状は、失神・めまい・頭痛・吐き気。症状の重さと血中のCO濃度は、あまり比例していませんでした。論文は、症状がなくても中毒を疑うべきだと結論づけています(Eichhornら、2018)。

2026年には、症例報告37件をまとめた論文が出ています。急性のCO中毒68例のうち、失神が52.9%、頭痛が50.0%、めまいが44.1%、吐き気・嘔吐が38.2%でした。吸った本人ではなく、居合わせた人や従業員が中毒になった例も、4件含まれています(Murakiら、2026)。

つまり、症状だけでは、ニコチンかCOかを見分けられません。 そして、くらくらしなかったことは、COを吸っていない証拠にはなりません。

症例報告や小規模な調査が中心なので、どれくらいの割合で起きるかは分かっていません。それでも、「ただのニコクラ」と軽く見ないほうがいい理由としては、これで十分です。

よくある思い込み

「ニコチンフリーなら起きない」は、誤解です。 ニコチンを含まない製品でも、加熱に炭を使うかぎり、COは出ます。ニコチンが原因のニコクラは防げても、CO由来の不調は残ります。くわしくはニコチンフリーに書いてあります。

「水を通すから体に優しい」も、誤解です。 東京都の調査では、水を通ったあとのホースの先で採った煙のCO濃度が、10,000ppm以上でした。水を通れば安心、とは言えません。健康リスクの基礎知識に、ほかの誤解もまとめています。

「慣れているから自分は大丈夫」と思っても、当てになりません。先ほどの研究にあったとおり、症状の強さと血中のCO濃度は、対応しないことがあります。自分の感覚だけでは、COを吸っているかどうか分かりません。

「休めばすぐ治るから軽い話」というわけでもありません。軽いCO中毒は、新鮮な空気で回復することが多いです。ただ、失神や意識障害に至った例も報告されています。症状が引かないとき、強い症状が出たときは、軽く扱わないでください。

くらくらしたら、どうする?

原因が分からないので、どちらでも通用する動きを先にとります。東京都は、体調に異変を感じたらすぐに使用をやめるよう呼びかけています。換気扇を回す、扉や窓を開けるなどして、室内のCO濃度を下げることも勧めています。MSDマニュアルも、軽いCO中毒は新鮮な空気を吸えば回復する場合が多いとしています。

意識がもうろうとする、失神した、嘔吐が続く、胸が痛む、息が苦しい。 こうしたときは、様子を見ずに救急車(119番)を呼んでください。

重いCO中毒は、いったん回復したように見えても、数週間後に記憶障害や抑うつなどが出ることがあります。MSDマニュアルにそう書かれています。受診するときは「水たばこを吸っていた」と伝えると、COを疑ってもらいやすくなります。

救急車を呼ぶほどではないけれど不安、というときの相談先もあります。公益財団法人 日本中毒情報センターの、大阪中毒110番(072-727-2499)とつくば中毒110番(029-852-9999)です。一般の方向けの電話は365日24時間つながり、情報提供料は無料です。MSDマニュアルもこの2つの番号を案内しています。

お店に行く人が知っておきたいこと

まず、換気を気にかけてください。症例報告をまとめた論文は、水たばこ1台あたり毎時130立方メートル以上の新鮮な空気が必要だとしています。そのうえで、換気の最低基準づくりと、CO警報機の設置を、店のルールにするよう求めています。CO警報機は、COの濃度を測って知らせる機器です。

この風量は、お客さんが確かめられる数字ではありません。換気やCO警報機が気になったら、店に聞いて構いません。ただし、屋外でも中毒が起きた例はあります。「外なら絶対安全」とも言えません。

それから、吸い方より先に、体調と環境を確かめましょう。具合が悪い日や、換気が悪いと感じる店では、無理をしないのが基本です。吸う間隔やペースを落としても、COを吸わなくなるわけではありません。

あと、同席者も同じ空気を吸っています。吸わない人にも影響する点は、二次喫煙の話と重なります。

なお、20歳未満は吸えません。年齢のルールは、法律と年齢のガイドで確認できます。

よくある質問

ニコクラとは何ですか?

シーシャやたばこを吸っている最中に、めまい・立ちくらみ・吐き気などが出る状態のことです。医学用語としては使われない俗称です。「ヤニクラ」とほぼ同じ意味です。ニコチンの摂りすぎが原因と言われることが多いです。ただ、シーシャでは炭から出る一酸化炭素でも似た症状が出ます。原因は、本人には見分けられません。

ニコクラとヤニクラは何が違いますか?

意味はほぼ同じです。ヤニクラは、紙巻きたばこの話でも使われます。どちらも日常の俗称で、公式の定義はありません。

ニコクラの症状は、一酸化炭素中毒の症状と同じですか?

重なります。軽い一酸化炭素中毒の症状は、頭痛・吐き気・めまい・集中力の低下・嘔吐・眠気などです(MSDマニュアル)。ニコクラとして語られる症状と、ほとんど同じです。症状だけでは区別できません。くらくらしたら、原因を考える前に、まず吸うのをやめて空気のよい場所に出てください。

ニコクラになったらどうすればいいですか?

すぐに吸うのをやめて、店の外など空気のよい場所に出ます。座るか横になって休みましょう。店のスタッフにも伝えてください。意識がもうろうとする、失神した、嘔吐が続く、胸が痛い、息が苦しい。そんなときは、救急車(119番)を呼んでください。

ニコチンが入っていなければ、くらくらしませんか?

いいえ。ニコチンがあってもなくても、炭を燃やせば一酸化炭素は出ます。ニコチンフリーの製品でも、換気の悪い空間では、一酸化炭素による不調が起こりえます。

この語が出てくる記事
採集記録(出典)

← 用語辞典に戻る