3行要約

  • ドイツ連邦財務省(BMF)のたばこ税法改正草案で、水たばこ用たばこの税率が2027〜2030年に段階的に引き上げられ、1kgあたり約56ユーロから188.46ユーロへ3倍超になる見通しが明らかになった。
  • 業界団体BVWTは平均小売価格が139ユーロ/kgから250〜300ユーロへ跳ね上がると試算し、「この価格水準では誰も合法的に生産・販売できなくなる」と強く反発している。
  • 草案はまだ法制化の初期段階で税率・施行時期は未確定。過去の規制強化局面では違法流通が最大8割に達したとの経験を業界団体は引き合いに出している。

188.46ユーロという着地点

ドイツ連邦財務省が示したたばこ税法(Tabaksteuergesetz)の改正草案(Referentenentwurf)は、水たばこ用たばこへの税率を2027年1月から段階的に引き上げ、2030年までに現行の約3倍超・1kgあたり188.46ユーロに到達させる内容を含むとされる。これを受け業界団体Bundesverband Wasserpfeifentabak e.V.(BVWT)の事務局長フォルケ・レガ氏は6月26日、値上げ幅の大きさと合法市場縮小への懸念を表明した。Lebensmittelpraxis、Wirtschaftstickerなど独立系のドイツメディアも同時期に同様の内容を報じており、単一の業界団体だけの主張ではないことがうかがえる。

BVWTの試算によれば、現行の税率は約56ユーロ/kg、平均小売価格は約139ユーロ/kg、200g缶で約27.90ユーロ。改正案の到達点である188.46ユーロ/kgに付加価値税・商業マージンを載せると、小売価格は250〜300ユーロ/kg、200g缶で最大60ユーロほどになるという。同団体はさらに、実際の葉たばこ含有率(製品重量の10〜15%程度とする同団体の説明)を基準に換算すれば、実効的な税負担は1,257〜1,885ユーロ/kg相当になるとも主張しているが、この換算方法の詳しい算出根拠は業界団体側の説明に依っており、第三者による検証は確認できていない。

BVWTは2021年以降、水たばこ用たばこの価格が累計277%上昇したと主張し、2022〜2024年に実施されていた小容量(25g以下)パッケージ規制の際には違法チャネル経由の消費が最大80%に達したとの推計も示している。

揺れ動く包装規制と、政治的な思惑への疑念

ドイツはEUたばこ製品指令(2014/40/EU)を国内実施しつつ、たばこ税率は加盟国が独自に設定できる。水たばこ用たばこは2022年頃に導入された小容量パッケージ規制(25g以下への制限)が2024年夏に撤廃され、200g以上の大容量販売が再び可能になったばかりだった。今回の税制改正案は、こうした包装規制の緩和とは逆に、価格面から需要を抑え込む方向へ舵を切ったものと見える。BVWTの声明は増税のタイミングが東部州の州議会選挙と関連しているとの疑念もにじませているが、これは業界団体側の見立てであり、政府の意図を裏付ける独立した証拠は確認できていない。

日本への波及は限定的、それでも見ておきたい理由

日本国内で流通するシーシャ用フレーバーたばこは、UAE(Al Fakherなど)やトルコ(Adalya、Serbetliなど)、ロシア(Darkside、Musthaveなど)が主要な供給元で、ドイツ製フレーバー(Holster、True Passion等)の国内シェアは限定的とみられる。このため今回の税制改正が国内価格へ直接波及する可能性は低い。

とはいえ、EU最大市場の一つであるドイツで水たばこ用たばこへの課税強化が進む動きは、他のEU加盟国や国際的な規制議論に波及しうる。研究所としては、フレーバーたばこ全般への課税・規制強化の潮流を占う先行指標として、この動きを注視しておきたい。なお、水たばこは水を通しても発がん性物質等の吸入リスクが低減される科学的根拠はなく、税制の如何にかかわらず喫煙由来の健康リスクが存在する製品であることは変わらない。草案が実際に議会を通過し、記載通りの税率で施行されるかはまだ固まっていない。