3行要約

  • 欧州委員会が2026年5月18日、たばこ製品指令(2014/40/EU、TPD)とたばこ広告指令の改正に向けた意見募集(Call for Evidence)を開始。証拠提供は6月15日、公開協議は8月14日を期限とする。
  • 改正の主眼は加熱式たばこやニコチンパウチなど新型製品への対応拡大で、水たばこへの直接言及は確認できていないが、現行TPDが水たばこ用たばこに認めている成分規制・表示義務の適用除外(第2条13項、第7条12項、第11条)が見直し対象に入るかが注目点になる。
  • 意見募集はまだ手続きの初期段階で、正式な改正案の提出や欧州議会・理事会での審議には数年単位の時間がかかるとみられる。

意見募集が始まった経緯

欧州委員会は2026年4月2日、EUたばこ規制枠組みの評価文書(Staff Working Document, SWD(2026)111 final)を公表した。これに続く5月18日、TPD(2014/40/EU)とたばこ広告指令の改正に向けた意見募集・公開協議の開始をブリュッセルで発表している。改正の背景として、欧州委員会は「新型たばこ・ニコチン製品の急速な出現に関連する課題」を挙げ、従来の「たばこ」を対象とした規制枠組みから、ニコチン含有製品全般を技術中立的に対象とする方向へのスコープ拡大を検討しているとみられる。改正プロセスの目標には「2040年までのたばこフリー世代の達成」という既存のEU目標の支援も掲げられている。対象は市民、企業、団体、研究者、NGO、加盟国当局など幅広い主体に開かれている。

水たばこの適用除外規定が焦点になるか

現行TPD第2条13項は“waterpipe tobacco”(水たばこ用たばこ)を「水たばこを通じて消費可能なたばこ製品であり、本指令の目的上、喫煙用たばこ製品とみなす」と定義する。第7条12項(成分規制)と第11条(ラベリング義務)は、この水たばこ用たばこに一部の適用除外を認めてきた。紙巻きたばこは2020年からメンソール等の特徴的フレーバーが全面禁止されている一方、水たばこ用たばこはこの適用除外規定により、フレーバー規制の対象から一部外れてきた経緯がある。

今回の改正プロセスは当初、加熱式たばこや使い捨てベイプ、ニコチンパウチといった新型製品への対応強化を主眼としているとみられるが、指令全体を見直す性質上、水たばこ用たばこの既存の適用除外規定が議論の俎上に載る可能性は否定できない。意見募集のページ本文で“water pipe tobacco”や“shisha”に類する語が明示的に言及されているかどうかは、現行条文からの推測にとどまり本稿では確認できていない。

日本への影響は間接的、それでも注視したい理由

日本はEU法の直接の適用対象ではないため、今回の意見募集や将来の改正が国内法規制に直接及ぶことはない。しかしEUの規制動向は国際的なたばこ関連規制の議論に一定の影響力を持つ。仮に水たばこ用たばこのフレーバー規制が将来強化されれば、EU域内向けに製品設計・フレーバー処方を行うメーカー(ドイツ・その他EU圏のブランドを含む)のラインナップに変化が生じ、間接的に国内の輸入・卸売事業者が扱う商品構成に波及する可能性がある。

研究所としては、国際的な規制強化の潮流を早期に把握しておくことが、日本国内での将来的な規制議論を予測する材料にもなると考えている。正式な改正案の提出時期や、水たばこの適用除外条項が実際に見直しの対象に含まれるかは、まだ何も固まっていない。