3行要約

  • 北海道新聞デジタルの報道によれば、道内の道立高校で生徒が「ポケットシーシャ」を集団使用していたことが6月に発覚し、学校側が対応に苦慮しています。
  • ポケットシーシャはニコチン・タールを含まない製品が多く、喫煙可能年齢を定める法律の対象が「たばこ」に限定されているため、20歳未満が使っても現行法では罰則の対象にならないのが実情です。
  • 海外では法規制が進んでいるとされる一方、日本ではこの種の非タバコ系フレーバー蒸気製品を横断的に規制する枠組みが存在せず、制度上の空白が学校現場の悩みの種になっています。

道立高校での集団使用、無期限謹慎に

北海道新聞デジタルが報じたところによると、2026年6月、道内の道立高校で生徒による集団使用が発覚し、複数の生徒が無期限の自宅謹慎となりました。学校側は「喫煙につながる恐れ」や健康被害への懸念を理由にこの種の製品の使用を認めておらず、対応に苦慮していると報じられています。専門家は「有害性について理解を深める必要がある」と指摘しているといいます。

なぜ「未成年でも合法」なのか

ポケットシーシャは、炭やベース水を使わず、リキッドを電気で加熱して香り付きの蒸気を発生させる携帯型の器具です。多くの製品がニコチン・タールを含まない設計になっており、ここに規制上の急所があります。日本で喫煙可能年齢を定めている根拠法は、1900年(明治33年)制定の「二十歳未満ノ者ノ喫煙ノ禁止ニ関スル法律」ですが、この法律が対象とする「喫煙」は基本的にニコチンやタールを含むたばこ製品を前提としているとされ、ニコチンを含まない製品はこの法律の射程の外にあると業界メディアでも解説されています。当研究所が別稿でシーシャの法制度を整理した際にも、水たばこ用フレーバーがたばこ事業法上の「製造たばこ」に分類される一方、ノンニコチン製品がこの分類に該当するのかどうかは条文上の明確な定義が確認できていない、というグレーな部分が残ることを確認していました。

もう一つの規制の柱である健康増進法(受動喫煙対策)も、規制対象を紙巻きたばこや加熱式たばこといった既存のたばこ製品類型を前提に組み立てられており、ニコチンを含まない香り付き蒸気デバイスを名指しで扱う条文は見当たりません。結果として、ポケットシーシャは「たばこ事業法上のたばこでもなく、喫煙年齢規制の対象でもない」という、どちらの枠組みからもこぼれ落ちる位置に置かれているとみられます。業界メディアの解説でも、法的な年齢制限がない代わりに、販売事業者が自主的に20歳未満への販売を控えるといった業界慣行レベルの自粛にとどまっているケースが多いと指摘されています。

海外の法規制と、日本の宿題

北海道新聞の記事は「海外では法規制が進んでいる」と簡潔に触れています。ニコチンの有無にかかわらず、フレーバー付きの喫煙類似製品を包括的に規制する法体系を持つ国・地域がある一方、日本はたばこ事業法・健康増進法とも「ニコチンを含む伝統的なたばこ製品」を主眼に設計された制度であるため、こうした新型デバイスの登場に追いついていないのが実情です。当研究所が扱ってきた「未認可フレーバー」や「電子シーシャ」といったテーマとも重なりますが、いずれも既存の許認可制度が想定していなかった商品カテゴリーが先に市場に出て、後から規制論議が追いかける構図になっている点は共通しています。

研究員の考察

今回の事例で興味深いのは、問題になっているのが「違法薬物」でも「たばこの脱法的な代用品」でもなく、制度上は合法な製品でありながら、学校という現場では明確に忌避されているという構図です。これは規制の失敗というより、法律の対象範囲が現実の商品開発のスピードに追いついていない典型例といえるでしょう。今後、未成年の利用実態がどの程度広がっているかのデータや、諸外国の規制内容の詳細が明らかになれば、日本国内でも何らかの制度対応の議論が始まる可能性があります。次稿では、この空白に対して業界側がどう動き始めているかを続報でお伝えします。