3行要約
- ボトルの水は煙を冷やして湿らせます。2020年の機械の実験では、水を通してニコチンなどが約半分に減っただけで、一酸化炭素などは減りませんでした。
- 水を通ったあとの煙にも、ニコチンと香料成分は残っています。氷やジュース割りが体への影響を変えるかを調べた研究は見当たりません。
- 水は「口当たりを整える部品」と考えるのが近く、安全の根拠にはなりません。喫煙は20歳以上で、気分が悪くなったらすぐ休みましょう。
「水はフィルターではない」という結論の要点は健康リスクの基礎知識にあります。WHOなどの全体像を知りたい方は、シーシャの健康リスクを科学的に整理するをどうぞ。
シーシャの水は何のために入っているの?
水は、炭で熱した煙を通して冷まし、湿らせるために入っています。ボトル(ベース)に張った水の中を、煙が泡になって通ります。その泡が、のどあたりのやわらかい口当たりをつくるのです。用語辞典でも、水を張ると煙が冷やされて吸い心地がマイルドになる仕組みだと説明しています(ベース)。
ただ、「冷えて吸いやすい」ことと「有害な成分が取り除かれる」ことは別の話です。水が「フィルターの代わり」と呼ばれることもありますが、実際に減るのは一部の成分だけです。CDCは、水たばこの水は煙をフィルターしないと説明しています。水を通ったあとも、煙には高い濃度の有害物質が含まれるとしています。
水は煙の温度を下げます。ただ、2020年の実験では、ニコチンなどは約半分に減った一方、乾燥した粒子ははっきりとは減りませんでした。一酸化炭素や多環芳香族炭化水素(PAH)も、減っていません。くわしい結果は次の節に書きました。
水を通すと、煙の中身は実際どう変わるの?
実験では、水に通ると減る成分と、ほとんど減らない成分に分かれました。レバノンとアメリカの研究(2020年)では、機械でシーシャを吸わせて、水を通した場合と通さない場合を比べています。結果は次のとおりです。
- 一酸化炭素(CO)、一酸化窒素(NO)、多環芳香族炭化水素(PAH、煙に含まれる発がん性物質の仲間)、乾燥した粒子:水を通しても有意には減らなかった
- ニコチンとカルボニル化合物(アルデヒド類など):約半分に減った
水に溶けやすい成分はある程度とれて、溶けにくい成分はそのまま通る、という見方です。研究チームの理論計算とも合っていました。
水を通ったあとも、ニコチンや香料は残る?
残っています。アメリカのイェール大学などの研究(2021年)では、3種類のフレーバー(バニラ、チェリー、シナモン)を機械で吸わせました。そして水を通る前後の煙を測っています。
| 成分(フレーバー) | 水を通る前(1パフあたり) | 水を通ったあと(1パフあたり) | 減った割合 |
|---|---|---|---|
| ニコチン(バニラ) | 44 µg | 14 µg | 約3.1分の1 |
| ニコチン(シナモン) | 61 µg | 43 µg | 約1.4分の1 |
| 香料のバニリン(バニラ) | 209 µg | 55 µg | 約3.8分の1 |
| 香料のベンズアルデヒド(チェリー) | 101 µg | 9.8 µg | 約10分の1 |
水を通ったあとの煙にも、1パフあたりニコチンが13〜46 µg、香料成分が6〜55 µg残っていたと、論文の要旨にあります(µgは100万分の1グラム)。シーシャは1回の時間が長く、吸うパフ数も多いので、1回あたりの総量は小さくないだろうというのが研究チームの見方です。
どちらも機械で吸わせた実験です。人の吸い方や体への影響まで確かめたものではありません。
水が少し働くなら、安全といえるの?
いえ、言えません。減るものがある一方で、一酸化炭素のように中毒に関わる成分は減らないからです。
CDCによると、1回のシーシャで吸う煙は約90,000mLで、紙巻き1本の100〜200倍です。一酸化炭素は紙巻き1本の約9倍、ニコチンは約1.7倍に触れうるとしています。WHOも、水たばこを紙巻きより「害が少ない」とみなす誤解を否定しています。他のたばこ製品と同水準の規制を求める立場です。炭で熱している以上、水を通しても一酸化炭素の問題は残ります。
水があっても、安心の根拠にはなりません。換気やペースなど、リスクを下げる考え方は健康リスクの基礎知識と科学的な整理の記事で詳しく扱っています。
水の量や氷、ジュース割りに意味はある?
意味があるのは主に「吸い心地」と「味」です。体への影響が変わるという研究は見つかっていません。
水の量は、多いほど冷えるわけではなく、多すぎると吸いが重くなったり、泡の音が大きくなったりするとされています。迷ったら少なめから始めて、5mm〜1cmずつ調整していくのが定番とされています。
氷は、ボトルの液体を冷やして、煙を冷たく感じさせる工夫として紹介されています。ただし、氷でフレーバーの風味が弱く感じられることもある、とも書かれています。お店でも、氷入りのボトルを選べるところが多いです。2021年のCLOUDの記事では、100〜500円ほどで頼めることが多いとされていました。今の料金は店ごとに違うので、メニューで確かめてください。
水の代わりにジュースなどを入れる楽しみ方も、味や香りを変える工夫として紹介されています(ボトルアルコールもその仲間です)。
これらが有害成分を減らすのか増やすのか、確かめたデータは見つかりませんでした。「冷たいから安心」「ジュース割りだから優しい」とは考えず、味の好みで選びましょう。
水はいつ替えるの?
公的な替え時の目安は見当たりません。お店ではスタッフが用意するので、お客さんが替える場面は多くありません。
自宅で楽しむ場合は、使うたびに水を捨てて洗うのが一般的な手入れです。
日本ではこの話をどう受け止めればいい?
日本では、シーシャは「たばこ」として扱われます。水を通っていても、たばこの煙であることに変わりはありません。20歳未満は入店できません。身分証や例外については、何歳から?身分証は必要?を読んでください。
日本でも、一酸化炭素中毒が疑われる救急要請が報告されています。日本臨床救急医学会雑誌に載った研究では、東京消防庁の第三消防方面管内で、2018年1月から2023年6月までに64件ありました。「水を通るから大丈夫」と考えて長く吸い続けるより、こまめに休んだり、換気のいい場所を選んだりするほうが、初めての人には現実的です。
初めての人は水をどう考えればいい?
水は口当たりを整える部品と割り切って、氷やジュース割りは味の好みで選んでください。気分が悪くなったら吸うのをやめて休みましょう。
ニコチンが気になる場合は、たばこ葉を使わないタイプもあります(ノンニコチンのシーシャ)。ただし、炭を使うかぎり一酸化炭素は残ります。
初めてお店に行く方は、はじめてシーシャ屋に行く人のガイドも合わせて読んでみてください。水の役割を知っておくと、氷やドリンク割りも味の工夫として気軽に選べます。


