トンバク
とんばくTumbak
トンバクは、糖蜜や香料を加えない、水たばこ用の葉の呼び名です。アジャミとも呼ばれます。水でしめらせた葉を、ホイルを挟まず炭に直接のせて吸います。現在主流のマアッスルより前からある、昔ながらのたばこです。
トンバクは、糖蜜も香料も加えない、水たばこ用の葉のことです。英語では tumbak や tombak と書きます。「アジャミ」(ajami) とも呼ばれます。
WHOは、水たばこ用のたばこを大きく2つに分けています。穴あきホイルで炭と隔てるマアッスルと、炭を直接のせる昔ながらのアジャミです。アジャミは無香料で、Tumbak や Tunbak の名でも呼ばれます。
アジアとアフリカで何世紀も吸われてきた葉だと、Chaouachi は説明します。香りつきのマアッスルは、ずっと新しい調合です。
Kassem らの総説は、無香料のたばこ(アジャミ、イスファハニ、トンバク)を、乾いたたばこ葉からなる、と説明しています。
仕込みは、Chaouachi の用語集に出てきます。刻んだ葉を何時間も水に浸し、絞ってから、ボウルに詰めます。強いたばこで、アジアとアフリカの外ではあまり使われないそうです。
炭は、ホイルを挟まず、葉に直接のせます。マアッスルのように、穴あきホイルで炭との間を空ける方式とは、ここが違います(フォイル)。炭と葉が直接ふれる点を、Chaouachi の2015年の論文はトンバクの特徴に挙げています。
マアッスルが広まる前の吸い方について、Maziak らは別の言い方で書いています。葉をつぶし、水とまぜ、絞って、形を整えてから詰めるやり方です。煙は強くて荒かった、という説明です。
同じ無香料の葉に、いくつもの名前がついています。
- Kassem らの総説では、アジャミ、イスファハニ、トンバク(Tumbak / Tombak)が、同じ無香料の種類に入っています。
- WHOは、Tumbak、Tunbak、Jurak を、無香料のアジャミの別名に挙げています。
- Chaouachi は、tumbak、tumbeki、'ajamy を同じ葉の名前としています。
- トルコ語では tömbeki と書きます。
ジュラクの扱いだけは、資料で割れます。Chaouachi と2019年の総説は、ジュラクをトンバクとは別のたばことして区別しています。Chaouachi の説明では、たばこ約30%に、糖蜜や蜂蜜、ブドウ糖シロップ、刻んだ果実を約70%混ぜたものです。グリセリンは入っていません。
トルコ語協会(TDK)の辞典は、tömbeki を、おもにイランで育ち、ナルギレで吸う葉たばこと説明しています。学名 Nicotiana persica が添えられ、語源はペルシア語の tenbākū とされています。
ペルシア語の tanbâku は、いまは「たばこ」を指す一般の語です。Wiktionary は、これをポルトガル語の tabaco から借りた語としています。綴りの別形には、تنباک (tanbâk) があります。
ガリヤーンというイランの水パイプの名前は、ガリヤーンの項にあります。
ペルシアにたばこが入ったのは、一般に1585年から1600年ごろです。日本語版Wikipediaは、鈴木達也(2015)を典拠にそう書いています。
英語版Wikipediaによると、サファヴィー朝のシャー・アッバース1世は、たばこを強く非難しました。それでも治世の終わりごろには、ガリヤーンなどで吸う習慣が、あらゆる階層に広がっていました。
オスマン帝国の側にも記録があります。TDV イスラーム百科事典によると、イランから輸入される水たばこ用の葉トンバキ(tömbeki)は、18世紀の半ばから入ってきていました。19世紀の半ばの等級では、一等級に入っています。1794年までは、イランのトンバキ以外の外国産たばこは輸入されませんでした。
同じ綴りで、別のものを指す言葉があります。Wiktionary によると、tombak は、ペルシア音楽でよく使われる杯形の太鼓のことです。ペルシア語では تنبک (tonbak) と書きます。
tombak には、銅と亜鉛の合金の意味もあります。マレー語とインドネシア語の tombak は、「槍」のことです。たばこの話でトンバクと出てきたら、前後の文脈で見分けます。
トンバクとは何ですか?
糖蜜も香料も加えない、水たばこ用の葉のことです。アジャミとも呼ばれます。炭を葉に直接のせて吸う、昔ながらの方式で使われます。
トンバクとアジャミは同じものですか?
WHOも Kassem らの総説も、同じ無香料の葉の名前として並べています。
トンバクにフレーバーはありますか?
ありません。糖類や香料を加えたものは、マアッスルと呼ばれて、トンバクとは区別されます。
トンバクを吸うとき、ホイルは使いますか?
WHOの説明では、ホイルを挟まず、炭を葉に直接のせます。ホイルを挟むのは、マアッスルの方式です。
- WHO FCTC知識ハブ「Waterpipe tobacco smoking」概要ページ
- Chaouachi「Hookah (Shisha, Narghile) Smoking and Environmental Tobacco Smoke (ETS)」(IJERPH, 2009)
- Chaouachi「Use & Misuse of Water-filtered Tobacco Smoking Pipes in the World」(Open Medicinal Chemistry Journal, 2015)
- Kassem ら「Toxicity of waterpipe tobacco smoking: the role of flavors, sweeteners, humectants, and charcoal」(Toxicological Sciences, 2024)
- 「The effects of hookah/waterpipe smoking on general health and the cardiovascular system」(Environmental Health and Preventive Medicine, 2019)
- トルコ語協会(TDK)辞典「tömbeki」
- TDV イスラーム百科事典「TÜTÜN」
- Wiktionary「تنباکو」(ペルシア語)
- Wiktionary「tombak」
- Wikipedia日本語版「水タバコ」
- Wikipedia英語版「Muʽassel」
- Maziak ら「The global epidemiology of waterpipe smoking」(Tobacco Control, 2015)