3行要約
- インドのマドラス高等裁判所は2026年10月21日、チェンナイのパブやカフェが違法にフーカー(水タバコ)を提供していると訴える申立てを受け、州警察長官ら3者に回答を求めました。次回は11月19日です。
- 申立人の弁護士は、フーカー提供は法律で禁じられており、これだけ広く行われるのは当局の支援なしには考えにくいと主張しています。
- 背景には、フーカー・バーの開業を禁じ、1〜3年の禁錮を科すタミル・ナドゥ州の改正法(2023年第22号)があります。
高裁は何を命じ、何を訴えられているのか
マドラス高裁は10月21日(水)、チェンナイの弁護士ムクンダン氏の申立てについて、警察長官、チェンナイ警察本部長、禁酒・物品税局長の3者に回答を出すよう指示し、審理を11月19日に延期しました。命じたのは、首席裁判官S・A・ダルマディカリ氏とG・アルル・ムルガン判事の合議体です。報じられた範囲では、現時点で出たのは「回答の要求」までで、店の閉鎖や処分の命令ではありません。
申立人は、メイラープル、アルワルペート、ロイヤペッタ・ハイロード、タウザンド・ライツ、ヌンガンバッカム、コーダンバッカムの各地区のパブやカフェで、フーカーが違法に提供されていると主張しました。バー、パブ、飲食店、カフェでのフーカー提供は法律で禁じられているとして、警察に厳しい取り締まりを指示するよう求めています。また、こうした営業がこれだけ広い規模で続くのは役人の支援なしには難しいとも訴えました。報道によれば、申立人は、フーカー・バーの運営には最長3年の禁錮もあり得ると述べています。以上は、現地報道が伝える申立人側の主張で、事実として認定されたものではありません。なお、元の見出しにある The Hindu の記事は、本稿の作成時に本文を取得できませんでした。日付や内容は The South First の報道とあわせて確認しています。
州の禁止の根拠は何か
タミル・ナドゥ州のフーカー禁止の根拠は、2023年に成立した「たばこ法」の州改正法(2023年第22号)です。州官報の号外(2023年6月30日付)によれば、この法は、インドの中央法である2003年のたばこ製品法(Cigarettes and Other Tobacco Products Act)を、タミル・ナドゥ州で適用する場合に限って改正するものです。大統領の同意は2023年6月21日、州官報号外への掲載は6月30日です。施行日は「州政府が告示で定める日」とされており、官報の写しからは確認できません。Lawbeat は、2023年8月に州政府がフーカー・バーの禁止を告示する官報を出したと報じていますが、その告示本体は本稿では確認できていません。
官報の条文から、主な中身を表にまとめます。
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 第3条(ee)(定義) | 「フーカー・バー」を、共用のフーカー(ナルギレ)でたばこを吸うために人が集まる場所と定義 |
| 第4A条(禁止) | 何人も、自分または他人のために、フーカー・バーを開業・運営し、または飲食店を含むあらゆる場所でフーカーを客に出してはならない |
| 第13A条(押収) | 州政府が認めた警部補以上の警察官は、違反があると信じる理由があれば、フーカー・バーに使う物品を押収できる |
| 第21A条(罰則) | 1年以上3年以下の禁錮、かつ2万ルピー以上5万ルピー以下の罰金 |
今回の申立ての主張は「フーカー提供は禁じられている」という趣旨で、根拠として中央のたばこ製品法が挙げられています。州の改正法は、その中央法に第4A条などを加える形になっています。
「たばこ入り」か「ハーブ」かで扱いが分かれる
マドラス高裁は、フーカーの提供を一律に違法とはしてきませんでした。一律に違法と読むのは誤りです。
2023年2月14日、G・チャンドラセカラン判事は、チェンナイ市のカフェ(申立人はJay Shah氏)が警察の干渉を止めるよう求めた事件で、フーカー提供の店に対し、公共の場所での喫煙禁止規則(2008年)の第4条に合う独立した喫煙区画があるなら、警察は営業に干渉してはならないと指示しました。判決は、水たばこによる喫煙そのものは最高裁判決(2014年)により禁止されていないとも述べています。ただしこの判決は、2023年6月に大統領の同意を得た州法より前のもので、州法の第4A条を検討したものではありません。
2026年7月22日の TaxCorp の報道によれば、マドラス高裁は FFL Cuisines の事件で、たばこもニコチンも含まないことを FSSAI が確認すれば、飲食店がハーブ・フーカーを出せるとしました。同時に、警察が日常的に店に干渉することは制限しつつ、違法が見つかった場合に動く権限は残したと伝えられています。報道は、2025年8月19日付の先行する別の事件の命令(FSSAIに確認を求める内容)を土台にしたものだとも述べています。
つまり、たばこ入りかハーブかで扱いが分かれる論点があります。今回の申立てがどちらを指しているのかは、報じられた範囲では分かりません。
この法律はすでに争われている
この州法の効力は、すでに別の裁判で争われています。Lawbeat(2024年3月11日付)の報道によると、飲食店(Coin Cafe Restaurant)がマドラス高裁に申立てをし、「たばこ」は憲法の連邦リスト第84項に当たる中央の専権事項なので、州はフーカー・バーの開業や提供を制限できないと主張しました。この申立ては、2023年6月30日付の官報の取り消しも求めています。当時のS・V・ガンガープルワラ首席裁判官らの合議体は、憲法の州リスト第6項で「健康」は州の事項であり、その点も検討が必要だと指摘したうえで、州政府などに通知を出し、州側の回答のため審理を2024年4月23日に延期しました。その後の結論は、本稿の調査では確認できていません。今回の件との関係も報じられておらず、同じ州法をめぐって「禁止の効力そのもの」と「禁止が守られているか」の2つの争いが、別々に高裁へ持ち込まれている形です。
日本の読者に関係することは
国内の流通や日本のシーシャ店に、この件が直接及ぼす影響はありません。タミル・ナドゥ州の店と規制の話で、日本の制度とは別だからです。
日本では、財務省の案内によると、製造たばこの小売販売を業として行おうとする者は、事前に国の「製造たばこ小売販売業の許可」(用語辞典)を受ける必要があります。許可を受けた場合は登録免許税15,000円の納付が必要です。国内のルールの全体像はシーシャは違法?何歳から? 日本の法制度を完全ガイドで整理しています。フーカーとシーシャの言葉の違いは用語辞典のフーカーにあります。
経緯と次に起きること

次の節目は、11月19日の次回審理です。警察と物品税局がどのような回答を出すかが焦点ですが、報じられた範囲では、回答の中身はまだ分かりません。
南アジアの裁判所が水たばこの店に踏み込んだ最近の例としては、パキスタン首都の全シーシャ店に閉鎖命令があります。インドの別の州の動きは、ハリヤーナー州のカープ集会がフーカーと決別への記事で扱っています。


