3行要約

  • シーシャ店は、法律の抜け穴で営業しているわけではありません。改正健康増進法は原則として屋内禁煙ですが、「喫煙を主目的とする施設(喫煙目的施設)」という例外の区分があります。多くのシーシャ店はこの枠組みで営業していると考えられ、目印は入口の「喫煙目的室あり」の標識です。
  • 20歳未満は、吸うことも、喫煙する場所に入ることもできません。
  • 店側には、たばこの対面販売・喫煙の場の提供が主目的・主食を主として出さない、の3つの要件があります。たばこを売る財務省の許可も、別に必要です。
  • 現行の制度に喫煙目的施設の届出はありません。2026年7月に、厚生労働省の専門委員会が届出制を導入する方針をまとめた段階で、様式や開始日は未公表です。

「例外」として、最初から想定された仕組み

2018年に成立し、2020年4月に全面施行された改正健康増進法は、望まない受動喫煙を防ぐことを目的に、多数の者が利用する施設を原則屋内禁煙としました。飲食店やオフィス、学校などは、基本的にこの規制の対象です。

ただ、この法律は一律に禁煙を強制しているわけではありません。喫煙を主たる目的とする施設については、例外的に喫煙を認める区分を設けています。これが「喫煙目的施設」と呼ばれるカテゴリーです。厚生労働省の説明によれば、次の3類型が当たります。

  • (1)屋内全体を専ら喫煙場所とする公衆喫煙所
  • (2)たばこの対面販売を行いながら、喫煙場所の提供を主目的とするバー・スナック等
  • (3)たばこや喫煙用器具の対面販売を主目的とする店舗

多くのシーシャ専門店は、(2)の枠組みで営業していると考えられます。

つまり、シーシャ店が合法的に営業できているのは、法律の抜け穴を利用しているからではありません。改正健康増進法が最初から想定していた「喫煙を目的とする施設」という、正規の制度区分に則っているためです。

3区分の条件を、厚生労働省の説明にそって表にしました。

種類 主な条件(厚生労働省の説明)
公衆喫煙所 屋内の場所の全部を、専ら喫煙をする場所とすること
喫煙を主な目的とするバー・スナック等 たばこの対面販売(出張販売を含む)を行い、屋内で喫煙場所を提供することが主な目的。客に飲食をさせる営業をしてよいが、通常主食と認められる食事を主として出す店は除く
店内で喫煙できるたばこ販売店 たばこまたは喫煙用の器具を販売する。飲食をさせる営業を行う店は除く

以下では、シーシャ店が当たる2つ目の区分を中心に見ていきます。

3つの要件と、喫煙室の技術基準

シーシャ店が当たる類型(喫煙を主目的とするバー・スナック等)の要件は、3つあります。

  • 施設内でたばこの対面販売を実際に行っていること
  • 喫煙の場の提供が施設の主たる目的であること
  • 主食を主として提供していないこと

この3つは、法律の委任を受けた政令(内閣が決めるきまり)で定められています。これとは別に、店内で煙を出す喫煙目的室には、煙が漏れないための技術基準がかかります。たとえば、境界で一定以上の風速(出入口で毎秒0.2メートル以上)で外から空気が流れ込むことなどです。要件は施設の類型に、技術基準は喫煙室に、と分かれています。

3番目の要件は、実務上とりわけ重要です。ドリンクや軽食(おつまみ等)を出すこと自体は問題ありません。ただ、米飯・パン・麺類といった「主食」をメインメニューにすると、喫煙目的施設の要件から外れるおそれがあります。

厚生労働省は、主食を「社会通念上主食と認められる食事」としています。主に米飯類、パン類(菓子パン類を除く)、麺類などが当たると示す一方で、範囲は地域や文化によって異なり、実情に応じて判断すると説明しています。シーシャ店の多くが「フード」よりも「ドリンク・シーシャ体験」を主軸にした業態設計になっている背景には、この規制上の制約があると考えられます。

【お店・開業する人向け】たばこを売る許可と、出張販売のしくみ

要件の1つ目にある「対面販売」とは、人が客にたばこを売ることです。場所は、たばこ事業法第22条の小売販売業の許可を得た者が営業する場所か、同法第26条の出張販売の許可を受けた場所です。自動販売機だけの販売は含まれません。シーシャ用のフレーバーもたばこなので、店がこの許可を持つか、許可を持つ業者の出張販売を受けていることが前提になります。

喫煙目的施設としての要件充足(標識の掲示など)に加えて、水たばこ用フレーバーを客に提供するには、たばこ事業法上の販売許可も必要になります。正攻法は、第22条に基づく「製造たばこ小売販売業の許可」を自分で取ることです。財務省のページによると、許可を受けると登録免許税が15,000円かかります。審査にかかる期間の目安は、申請を受け付けた月の末日から2か月以内です。審査の基準は法令・告示・取扱要領にあり、申請者向けのリーフレットで確認するよう案内されています。取得のハードルは高いとされています。

そこで実務上は、すでに小売販売許可を持つ仕入先業者(たばこ卸・小売事業者)に頼んで、自店を「出張販売」の場所として登録してもらう「出張販売許可」を利用するケースがあると、行政書士事務所の解説は説明しています。どれだけの店がこの方法を使っているかを示す公的な資料は、確認できていません。財務省の制度説明では、出張販売許可はたばこ事業法第26条に基づき、既存の小売販売業者がその営業所以外の場所で販売する際に必要になるものです。登録免許税は3,000円で、標準処理期間は受理月の末日から2か月以内とされています。

この方式には、小売販売業許可のような厳格な距離基準の審査を経ずに済む利点があります。反面、仕入先業者の協力が得られなければ、申請自体が成立しないという制約もあります。

入口の標識は、何を見ればいい?

シーシャ店で探すのは、入口にある「喫煙目的室あり」の標識です。喫煙できる設備を持つ施設には標識の掲示が義務づけられていて、厚生労働省は入口に掲げる標識を4種類示しています。

標識の文言 見分け方
喫煙専用室あり 喫煙専用室がある施設
加熱式たばこ専用喫煙室あり 加熱式たばこ専用の喫煙室がある施設
喫煙目的室あり 喫煙目的施設の目印。シーシャ店で探すのはこれ
喫煙可能室あり 喫煙可能室がある施設

条文では、標識は2か所に必要とされています。喫煙する場所の入口には、「喫煙を目的とする場所であること」と「20歳未満の立入りが禁止されていること」を書いた標識を掲げます。店の主たる出入口には、「喫煙目的室が設置されていること」を書いた標識を掲げます(第35条第2項・第3項)。紛らわしい表示や、標識の汚損も禁止されています。これらが見当たらない店は、少なくとも入口からは、どの区分の店なのか分かりません。

標識が見当たらない店では、入る前に、店の人に「喫煙目的室の標識はありますか」と聞くのが無理のない対応です。標識の掲示は、店に課された義務です。守られていないときに指導や助言をすることができるのは、都道府県知事です(第31条)。

店には、このほかにも決められた義務があります。客に飲食をさせる営業などをする施設は、喫煙目的施設の要件に関する帳簿をつけて保存すること。広告や宣伝では、喫煙目的室設置施設であることを明らかにすること。

また、要件を満たさなくなった場合は、都道府県知事が、標識を外すこと、または供用の停止を勧告できます(第35条、第36条)。勧告とは、従うよう求める行政の働きかけのことです。供用の停止は、その施設や部屋を使わせるのをやめることです。これらは知事の権限で、店の義務とは別の話です。

20歳未満はどうなる?違反したら?

20歳未満は入店できません。身分証や例外の話は何歳から?身分証は必要?にまとめています。

事業者側の根拠は、喫煙目的室設置施設の管理権原者(施設を管理する権限をもつ人)や管理者は20歳未満の者を喫煙目的室に立ち入らせてはならない、という規定(第35条第7項)です。厚生労働省の説明では、喫煙を目的としない同行者であっても、客だけでなく従業員であっても、20歳未満は喫煙エリアに立ち入れません。店側に課された義務なので、20歳未満の人を入れないよう義務を負うのは店です。

では、吸わない20歳以上の同席者はどうでしょう。第35条第7項が立入りを禁じているのは20歳未満の者で、20歳以上の人の立入りを禁じる定めは、この条文にはありません。店ごとの入店のルールは条文の外なので、店に確認してください。同席する側の健康面は吸わない友達と行く場合に、年齢の決まりは年齢の記事にまとめています。

罰則は、e-Govの健康増進法の現行の条文(第76〜78条)で、2026年10月31日に読み直して確認しました。過料とは、行政上の決まりに違反したときに払うお金で、刑罰の罰金とは別のものです。誰に科されるかで分けると、次のとおりです。

  • 客(喫煙した本人):禁煙の場所で吸い、都道府県知事の中止または退出の命令(第29条第2項)に従わなかった場合は、30万円以下の過料(第77条第1号)。吸っただけで、すぐ過料になるわけではありません。
  • 店(管理権原者):主たる出入口の標識を掲げなかった場合(第35条第3項)や、標識の使用制限(第37条。誰に対しても禁じられています)に違反した場合、勧告に続く知事の命令(第36条第4項)に従わなかった場合は、50万円以下の過料(第76条)。帳簿を備えず、保存しなかった場合は、20万円以下の過料(第78条)。

20歳未満を喫煙目的室に立ち入らせてはならない(第35条第7項)という義務そのものには、過料の額を直接ひもづけた条がありません。過料を定める第76〜78条が挙げる項は第3項・第10項・第6項などで、第7項は入っていません。他のサイトには「20歳未満を入れた施設の管理者に50万円以下の過料」と書くものもありますが、現行の条文からは読み取れませんでした。

たばこの販売許可は別の法律です。たばこ事業法は、許可を受けずに製造たばこの小売販売を業として行った者に、30万円以下の罰金を定めています(第49条第3号)。出張販売の許可を受けずに営業所以外で売った場合も、同じ額です(同条第6号)。

喫煙目的施設の要件(標識の掲示など)と、たばこ販売許可・出張販売許可という2系統の制度は、並存しています(用語は喫煙目的施設、たばこ小売販売業許可)。どちらを欠いても、シーシャ店の営業は違法状態になり得ます。

国内では、いま何が変わろうとしている?

現行の制度に、喫煙目的施設の届出はありません。2026年7月に、厚生労働省の専門委員会が、届出を求める制度の導入方針をまとめた段階です。法律の見直しではなく、省令(厚生労働省が定める規則)の改正で実施する想定で、届出の様式と始まる日は公表されていません。

日付 出来事
2026年1月29日 厚生労働省が都道府県・保健所設置市・特別区の157団体に質問を送り(146団体が回答)、意見交換会を開催
2026年5月21日 第5回専門委員会に報告。喫煙目的施設は届出制ではないため実態を把握できず、指導を適切に行えない、と答えた自治体が76団体
2026年7月9日 共同通信によると、厚生労働省が専門委員会で届出制の導入方針を示した。要件を満たしていない施設が一定数あるとの認識も示された
2026年7月16日 第8回専門委員会。「喫煙目的施設の要件等」に「届出制度新設(省令改正)」を盛り込んだとりまとめ(案)が示された

とりまとめには、標識の掲示を関係団体の協力で改めて周知することや、よりシンプルな標識の例を検討することも書かれています。また、届出制度の導入から3年を目途に、飲食しながら喫煙できる既存の小さな飲食店への特例(経過措置)を検討するとしています。その際に、喫煙目的施設も、届出を通じて明らかになった実態を確認するとしています。加熱式たばこは、現状の取り扱いを続けながら研究を進めるとしています。

国内の店にとっては、届出の様式と始まる日が次の焦点になります。届出が始まるまでは、これまでどおり入口の標識が、どの区分の店かを見分ける手がかりです。省令の公布日や様式は、厚生労働省の発表で分かります。この表は、新しい公表が出たときに更新します。

【お店・事業者向け】編集部の考察

シーシャ店が営業できる理由を突き詰めると、「規制の空白」ではない、と整理するのが正確でしょう。改正健康増進法が用意した喫煙目的施設の制度と、たばこ事業法の販売許可制度。この二つの異なる法律の要件を同時に満たすことで、営業が成り立っています。

出張販売許可という仕入先頼みの仕組みを使う店もあるとされていますが、どれだけの店が使っているかを示す公的な資料はありません。主食を出せる範囲の制限も、店の業態づくりに関わります。

今後、喫煙目的施設の運用基準や出張販売許可の審査実務がどう変わるかは、シーシャ業界の店舗数や出店戦略にも影響を与え続けるとみられます。標識の掲示や20歳未満の入店禁止といった現場の対応は、単なる形式的な義務ではありません。施設としての適法性そのものを担保する条件です。喫煙目的施設としての要件と実際の運用実態にずれが生じれば、行政指導や許可取消しのリスクが生じえます。この点は、開業を検討する事業者にとって特に留意すべき論点だと、シーシャデックスは考えています。

製品側の認可はシーシャは違法?日本の法制度の全体像で、規制の最新の動きは規制ウォッチで読めます。