3行要約

  • シーシャ(水たばこ)の吸い口やホースを介して病気がうつる「可能性」は、WHOなどが指摘しています。ただ、実際に何人がうつったかを調べた研究はほとんどなく、頻度は分かっていません。
  • 結核は、症例報告と大麻用の水パイプの集団発生が1件ずつあります。C型肝炎は、エジプトの3調査で関連なしでした。ヘルペスなどは、総説に名前が挙がる段階です。
  • 妊娠中や持病のある人は、米国産婦人科学会がたばこ類を避けるよう説明しています。20歳未満は、吸うことも店に入ることもできません。

回し吸いで感染症はうつる?

うつる可能性は指摘されています。でも、シーシャの回し吸いで病気がうつった頻度を調べた研究は乏しく、「どの程度の危険があるか」は分かっていません。WHOは2015年の助言文書で、シーシャは共有が前提のため「吸い口を共有することで感染症が伝わる可能性がある」と書きました。CDCも、シーシャは同じ吸い口を人から人へ回して吸うのが一般的だと説明しています。

ただ、可能性の指摘と、実際に起きた頻度の測定は別物です。病名ごとに、報告の段階を分けて並べました。

対象 報告の段階 中身
結核 症例報告(1例) スイスの20歳男性。結核の典型的な危険因子がなく、シーシャ(水たばこ)を日常的に吸っていた(2020年)
結核 集団発生の調査(1件) オーストラリアで、大麻用の水パイプを回し吸いした仲間うちに患者5人。共用した人に感染の疑いが多かったが、同居など近い接触のほうが影響は大きかった(2003年)
C型肝炎 3件の調査 エジプトの調査はいずれも水たばことの関連を示さなかった(WHO、2015年)
ヘルペス・EBウイルスなど 総説の記述 2024年の総説が「共同で吸う場で広がりうる」と列挙。実際の感染の測定は示されていない
細菌・真菌 器具の検査 トルコの7店のシーシャ182台を調べ、吸い口の内側・外側とハンドルから微生物を検出(2020年)

この表から読み取れることが3つあります。まず、「器具に微生物がいる」ことと「人にうつる」ことは別の話です。器具の検査が示したのは、前者だけでした。WHOも結核について、「症例報告はあるが、関連を調べた正式な研究はまだ出ていない」と書いています。そして集団発生は大麻用の水パイプの話で、シーシャと同じ条件とは限りません。この調査でも、共用が感染に結びついたかは、統計上はっきりしていません。

妊娠中や持病があるなら?

回し吸いや吸い口の衛生を気にする前に、そもそも吸ってよいかを確かめるほうが先です。かかりつけの医師や産婦人科に、持病の名前と飲んでいる薬、水たばこを吸うことがある事実を伝えて、相談してください。妊娠中や喘息などの持病がある場合に、分かっていることと分かっていないことは、妊娠中・喘息・持病でシーシャは?にまとめています。

店の衛生対策には、どんなものがある?

店の対策として一般に紹介されるのは3つです。吸い口に付ける使い捨てのカバー(チップ)を客ごとに替える。ホースを洗って消毒する。自分専用の吸い口を使う。どれが感染をどれだけ減らすかを調べた研究は、見つかっていません。

出典から言えることは限られます。トルコの調査では、調べた7店のうち、衛生の手順があったのは1店だけでした。研究者は、手順と洗浄の間隔を決めるべきだと提言しています。サウジアラビアでホース2,489検体を調べた研究(MERSウイルスは未検出)は、ホースを1回限りのものに替えるよう勧めています。どちらも研究者の提案で、公的な基準ではありません。

吸い口に活性炭や綿を入れて「害を減らす」とうたう付属品もあります。これについてWHOは、毒物の吸入を減らすと実験で確かめられたものはないと書いています。ただし、これは煙の害の話で、感染の話ではありません。

用語は、吸い口がマウスピース、ホースがホース、洗えるホースがウォッシャブルホース、洗浄道具がクリーニングブラシの項に書きました。

店では何を聞けばいい?

気になるなら、次のことは尋ねてかまいません。研究で微生物が見つかった部位に対応させています。

聞くこと 関係する研究の記述
吸い口のチップを客ごとに替えるか、人数分もらえるか 吸い口の内外から微生物を検出(トルコ、2020年)
ホースをいつ、どう洗い、消毒しているか 衛生手順があったのは7店中1店。研究者は手順と洗浄の間隔を決めるよう提言
水の容器(ボトル)をどの頻度で洗うか 水の容器が、腸内などにすむ細菌(グラム陰性菌)にしばしば汚染されていた
自分用の吸い口を使えるか 使い回しの器具を減らすという提案(サウジのホース調査、2019年)

回し吸いそのものを減らす方法もあります。人数分のチップをもらう、自分用の吸い口を持参する、などです。どれも研究で効果が確かめられた方法ではなく、共用の機会を減らそうという考え方です。体調がすぐれないときは、回し吸いを控えるのが無難でしょう。WHOのヘルペスのファクトシートも、口唇ヘルペスの症状がある人に、唾液が触れた物の共有を避けるよう勧めています。HSV-1と呼ばれるこのウイルスは、症状がないときにも伝わりえます。

日本ではどう?

国内でも、吸い口の共用と感染症の関係を調べた公的な調査は見つかっていません。国内の店で使い捨てチップを出す割合を数えた統計もなく、日本の店の実態は、店ごとに確かめるのが現状です。結核は、厚生労働省によると主に咳やくしゃみの飛沫を吸い込む空気感染です。気になる症状が続くときは、医療機関に相談するのが基本になります。

20歳未満は入店できません。身分証や例外の話は何歳から?身分証は必要?にまとめています。店内の喫煙の決まりは国内のたばこ規制とシーシャ店に、初めての流れははじめてのシーシャに書きました。同席する人の側の話は吸わない友達と行く場合に、吸ったあとに気分が悪くなる場合はニコクラの記事にあります。

この先、新しい研究が出たら

吸い口を介した感染は、2000年代初めから症例や集団発生として報告されてきました。それでも、「何人がうつったか」を追った大規模な研究は見つかっていません。店の衛生手順の効果を測る研究が出るまでは、頻度は分からないままです。感染以外の健康への影響は、シーシャの健康リスクを科学的に整理すると健康リスクの基礎知識にまとめています。

本記事は医学的助言を目的としたものではなく、診断や治療の代わりにはなりません。妊娠中や持病がある場合、体調に不安がある場合、症状が続く場合は、かかりつけの医師や医療機関に相談してください。