3行要約

  • 妊娠中のシーシャを「安全」と示した研究は見つかっていない。米国産婦人科学会は妊娠中のたばこ使用を避けるよう説明している。WHOは、他人の煙(受動喫煙)に「安全なレベルはない」としている。
  • 水たばこと妊娠の研究は少ない。イランの調査(714件の妊娠)では、吸っていた人の低出生体重の危険が約2倍だった。喘息や心臓・血圧など持病との関係は、研究が少なく、分かっていないことが多い。
  • 迷うときは、行く前に主治医へ相談する。同席するだけでも、店の換気と席を事前に聞いておきたい。

20歳未満は、吸うことも店に入ることもできません(年齢と法律のガイド)。

妊娠中に吸うと、どうなる?

妊娠中の水たばこは、紙巻きたばこほど研究が積まれていません。それでも「安全」と示した研究は見つかっておらず、低出生体重との関連を示す調査が出ています。2025年には191件の観察研究をまとめた論文(延べ807,174人)が出て、水たばこと低出生体重の関連を認めたとされています。ただ、出生体重についての証拠の質は「低い」とされ、断定できる段階にはありません。

個別の調査も見ておきます。イラン南部で714件の妊娠を追った研究では、水たばこを吸っていた50人で、2,500g未満で生まれる危険が約2倍(調整後2.09倍)でした。同じ地域の1,120件の調査では、妊娠中に吸い続けた人の赤ちゃんは、一度も吸わなかった人より出生体重が平均137g軽くなっています。妊娠中にやめた人は、同じ比較で平均99g軽く、吸い続けた人との差は約38gでした。著者は、やめることには良い影響があったと結論しています。

米国産婦人科学会(ACOG)は、妊娠中はたばこ・アルコール・大麻などを使わないよう説明しています。ニコチンが胎児の脳や肺を傷つけるともしています。この説明は紙巻きたばこが中心で、水たばこは名指しされていません。ただ、「ニコチンなし」の製品を選んでも、炭を使って煙を吸うことは変わりません。炭から出る一酸化炭素(CO)の問題も残ります(健康リスクの整理)。

状況別に、何が分かっている?

状況によって、分かることはかなり違います。下の表は、上で挙げた研究が実際に述べた範囲だけをまとめたものです。治療や服薬の判断には使えません。

状況 研究が示していること 分かっていないこと まず相談する先
妊娠中に自分が吸う イランの調査で低出生体重の危険が約2倍。ACOGは妊娠中のたばこ使用を避けるよう説明 日本人での調査、吸う回数ごとの差、水たばこだけの長期の影響 産婦人科の主治医、助産師
妊娠中に同席する 受動喫煙に安全なレベルはない(WHO)。妊娠中の受動喫煙で低出生体重の危険が上がる(ACOG) 水たばこ店の空気と胎児への影響を直接調べた研究は見つかっていない 産婦人科の主治医
授乳中 水たばこと授乳の関係を調べた研究は見つかっていない 母乳への影響、授乳中に避けるべきか 産婦人科、助産師
喘息 191件のまとめでは、喘息との関連ははっきり出ていない(証拠の質は非常に低い)。慢性気管支炎・せき・たんとは関連。米国の成人調査では、1回の時間が長い人ほど喘息の発症が早い傾向 喘息の人に限った研究はほとんどなく、発作との関係は分からない かかりつけ医、呼吸器科
COPD(慢性の肺の病気) 191件のまとめでは、はっきりした関連は出ていない(5件・2,627人、証拠の質は非常に低い) 研究の数が少なく、安全かどうかは分からない 呼吸器科の主治医
心臓病・高血圧 冠動脈疾患(心臓の血管の病気)・脳卒中と関連(191件のまとめ)。レバノンの調査では、15分吸うと上の血圧が平均3.1mmHg、心拍が1分に6.3回上がった 長く吸う人の血圧や心拍は、まとめでは差が出ていない(証拠の質は非常に低い)。持病のある人での影響は分からない 循環器科の主治医
糖尿病 糖尿病・メタボリックシンドロームと関連(191件のまとめ) 血糖の管理にどう影響するかは分からない 糖尿病の主治医

表を読むときは、3つ気をつけてください。研究の多くはイランやヨルダンなど、水たばこが日常的な地域で行われています。日本の店とは吸い方も店の環境も違います。観察研究が示すのは「関連」で、原因の証明ではありません。191件のまとめも、証拠の質を全体として「低い」〜「非常に低い」と評価しています。「分からない」ことと「安全」は別の話です。この2つは混ぜないようにしたいところです。

吸わずに同席するだけでも、影響はある?

水たばこ店の空気は、屋外よりずっと高い数値が測られています。バルセロナの20店の調査(30分ずつ測定)では、空気中のニコチンの中央値が1立方メートルあたり1.15マイクログラムでした(屋外は0.03)。PM2.5(空気中の細かい粒子)は230.50マイクログラムです(屋外は10.00)。論文は、WHOの推奨する水準を超えたと述べています。測られたのはスペインの店で、日本の店の値ではありません。

他人の煙を吸う受動喫煙について、WHOは「安全なレベルはない」としています。ACOGは、妊娠中の受動喫煙が低出生体重の危険を上げると説明しています。生まれた赤ちゃんの乳幼児突然死症候群(SIDS)や喘息発作の危険も上がる、というのがACOGの説明です。同席する人も吸う人と同じ部屋の空気を吸う、という点は押さえておきたいところです。

子どもについては、ヨルダンの小児の調査(360人)で、親の水たばこと子どもの喘息に関連が見つかりました(調整後2.55倍)。ただ、この調査は喘息の子の親と、そうでない子の親を比べたものです。原因までは断定できません。

日本では、妊娠中や持病のある人に決まりはある?

妊婦だけを名指しした入店の制限は、改正健康増進法の条文に見つかりませんでした。決まりがあるのは20歳未満です。

厚生労働省のページ(喫煙を主目的とする施設)は、20歳未満の人が喫煙エリアに入ることを、喫煙しない場合でも禁じています。従業員であっても立ち入らせることはできません。

2020年4月に全面施行された同法は、喫煙する人にも「望まない受動喫煙を生じさせないよう周囲に配慮する」ことを求めています。多くのシーシャ店が拠り所にする「喫煙目的施設」の仕組みは、別の記事にまとめました。

法律が妊婦を止めないからといって、安全が保証されるわけではありません。判断の材料は、自分の体の状態と、その日の席と空気にあります。

迷ったら、何を確かめる?

「行く」「行かない」を決めるのは本人と主治医です。次の順に材料を集めると、整理しやすくなります。

  1. 自分が吸うのか、同席だけなのかを分けます。上の表のとおり、影響の出方が違います。
  2. 持病や妊娠の経過を知っている医師に、予定を伝えて聞きます。「吸う本数や時間」「同席してよいか」「どんな症状が出たらやめるか」をメモしておくと、答えてもらいやすいです。つらい症状が出ているときは、予定より医療機関への相談が先です。
  3. 店に事前に聞きます。個別の店の評価ではなく、一般に確認できる項目を聞きます。空気を入れ替える換気の設備があるか、COを知らせる機器があるか、吸う人の席と同席者の席が分かれているか、空いている時間帯があるか、体調が悪くなったときに休める場所があるか、の5つです。
  4. 当日は、息苦しさ・頭痛・吐き気・めまいが出たらすぐやめて、空気のよい場所へ出ます。炭によるCO中毒の報告では、意識を失ったり吐いたりした例があります。吸い始めて30分以内に起きた例もあると報告されています(健康リスクの整理)。

電子式や加熱式など、炭を使わない型については、この記事では扱いません。炭を使わない電気加熱式では、炭式より一酸化炭素が少なかった実験があります。ニコチンの取り込みは変わらなかったという結果もあります。妊娠中や持病のある人に安全と言える材料は、この記事の出典にはありません(電子シーシャと炭のシーシャの記事)。

同席する場合は吸わない友達と行く場合、炭のCOは炭のやけど・火災・CO、ニコチンなしの製品はノンニコチンのシーシャ、お酒との組み合わせはシーシャとお酒で読めます。

はじめて行く人向けの流れははじめてのシーシャバーガイド、リスクの全体像は健康リスクの基礎知識にあります。

この分野の研究は、これからどうなる?

水たばこと妊娠の研究は、限られてきました。イラン調査の著者も、この分野の研究は少ないと述べています。2025年には191件をまとめた総説が出ましたが、証拠の質は低いままです。妊娠や持病に限った研究は、今も少ないです。

米国北東部の妊婦900人に聞いた2026年の調査では、約9%(79人)が妊娠前〜妊娠中に水たばこを使ったと答えています。妊娠中に使う人は、実際にいるということです。日本人を対象にした妊娠・喘息の調査が出れば、この記事の表を更新します。

体に不安があるときは、診断や治療の代わりにならないこの記事ではなく、医療機関に相談してください。