3行要約
- シーシャ1回のニコチンは、血液中のピークなら紙巻き1本とほぼ同じ。1回の煙から体に入る量の推定では、2倍あまりと報告されている。測り方で幅があり、「何本分」と1つの数字にはできない。
- 1日の合計で見ると、水たばこ約3回の日の血中ニコチンは、紙巻き約11本の日の約半分だった(13人)。毎日使う人の尿を調べた統合では「1日約10本」相当とされた。
- 研究は人数が少なく、条件もそれぞれ違う。店ごとの葉の量や、今日の1回で何mg吸ったかは、研究からは分かっていない。
紙巻き何本分って、言える?
見つけた範囲では、「何本分」と1つの数字で答えた研究は見つかっていません。結果は分かれていて、血中のピークは紙巻き1本と同じ程度、体に入る総量の推定は水たばこのほうが多いと報告されています。
よく引かれるのが、米国のCDC(疾病予防管理センター)の説明です。1回の喫煙で、紙巻き1本に比べて一酸化炭素は約9倍、ニコチンは1.7倍にさらされうる、と書いています。「ありうる」という書き方で、数ある測定の1つを切り取った数字です。
なぜ1つの数字にならない?
研究ではシーシャを「水たばこ(waterpipe)」と呼びます。以下も同じものを指します。答えが割れる理由は、主に3つです。
- 測るものが違う。 血液のニコチン、煙に含まれるニコチン、尿に出る代謝物(コチニン)では、同じ1回でも数字の大きさが変わります。
- 吸う時間が違う。 紙巻きは平均6.1分、水たばこは平均43.3分という実験(54人)があります。別の実験(31人)では、吸い込んだ煙の総量が水たばこ48.6Lに対して、紙巻き1.0Lでした。
- 器具や条件で変わる。 器具の大きさを変えた実験(38人)では、小さい器具のほうが唾液中のニコチンが高くなりました。大きいほど増えるという予想とは逆向きです。
2つ目の48.6Lは、1回の実験室測定の値です。17件の研究の平均(約74L、研究によって38〜110L)やCDCの約90Lとは測り方が違います。それでも、水たばこのほうが紙巻きよりはるかに多いという向きは同じです(紙巻き・加熱式との比較)。
1回ぶんを測った研究は、次の3つです。
| 研究(年) | 人数 | 測ったもの | 結果 |
|---|---|---|---|
| Eissenbergほか(2009) | 31人 | 血液中ニコチンのピーク | 水たばこと紙巻き1本でほぼ同じ |
| Cobbほか(2011) | 54人 | 血液中ニコチンのピーク | 水たばこと紙巻き1本でほぼ同じ |
| Primackほか(2016) | 17研究のまとめ | 1回の煙から体に入る量 | 水たばこ4.1mg、紙巻き1本1.8mgと報告されている |
血中のピークは、2つの実験で紙巻きと差がありませんでした。一方、煙から体に入る量のまとめでは、Primackらが水たばこ4.1mg、紙巻き1.8mgと報告しています。前者は「いちばん濃くなった瞬間」、後者は「1回で入る合計」を見た数字です。どちらかが間違いというわけではありません。
1日で見ると、どうなる?
1日の合計で見ると、答えはさらに変わります。
| 研究(年) | 対象 | 結果 |
|---|---|---|
| Jacobほか(2013) | 13人。水たばこ約3回の日と紙巻き約11本の日を比べた | 血中ニコチンの1日の合計は、水たばこの日が紙巻きの日の約半分。1回のピークは同程度 |
| Neergaardほか(2007) | 4か国・6研究を調べたまとめ。毎日使う人の数字は、人のデータ4研究の合算 | 毎日使う人は、尿の検査で紙巻き約10本/日に相当。毎日ではない人の1回は、紙巻き2本ぶん相当 |
ピークが同じでも、吸う回数が少なければ、1日の合計は小さくなります。一方で毎日吸う人では、1日約10本ぶんに相当しました。この2つは対象も測り方も国も違います。矛盾というより、別の問いへの答えです。
体に入る量は、葉に入っているニコチンの量とも別の話です。Jacobらは先行報告を引いて、葉12.5gに約32mgのニコチンが含まれていた一方、体に入ったのは1回平均2.6mgだったと書いています。
ここまでの数字を並べると?
| 見方 | 答え | 根拠 |
|---|---|---|
| 血液中のピーク | 紙巻き約1本ぶん | 31人と54人の2つの実験 |
| 1回で体に入る量の推定 | Primackらは、水たばこ4.1mg、紙巻き1.8mgと報告している | 17研究のまとめ |
| 1日の血中ニコチンの合計 | 紙巻き約11本の日の約半分 | 13人の実験 |
| 毎日使う人の尿の検査 | Neergaardらは、紙巻き約10本/日に相当すると報告している | 6研究を調べ、人のデータ4研究を合算したまとめ |
どの行も、対象や測り方が違います。足し合わせたり、平均したりはできません。
研究から分かっていないことは?
- 個人差については、どの研究も数十人規模で、若い成人が中心です。ある人が1回で何mg取り込むかは、平均値からは言えません。
- 店ごとの違いは、葉の量、フレーバーのブレンド、炭やホースの違いでニコチン量がどう変わるかを比べた研究が見つかっていません。
- 体感との関係。「くらっとした」「強く感じた」が、ニコチン量とどう結びつくかは別の問いです。
体感については、Blankらの実験(37人)があります。心拍の上昇はニコチンによるとみられた一方、気分の変化はたばこなしの偽物でも同様に出ました。体感でニコチン量は推し量れません。体調が悪くなったときは、ニコクラ・ヤニクラの記事を読んでください。
器具や加熱方法で変わる?
炭と電気加熱を比べた2026年の試験(成人50人)では、尿に出るニコチンの指標に差は出ませんでした。電気加熱は一酸化炭素などは減らしましたが、ニコチンの摂取は減らしていません。くわしくは電子シーシャと炭シーシャの記事に書いてあります。
心臓や血圧への影響は血圧・心拍の記事に、紙巻きや加熱式との全体の比較は紙巻き・加熱式との比較にあります。
ニコチンが気になるとき、できることは?
数字から決められることは多くありませんが、記事の範囲で言えることがあります。
- ニコチンを避けたいなら、たばこ葉を使わない製品という選び方があります。ただし炭のCOは残ります(ノンニコチンのシーシャ)。
- 体感でニコチン量は推し量れません。上のBlankらの実験では、気分の変化はたばこなしの偽物でも出ました。始める前に、何分で切り上げるかを自分で決めておくのが現実的です。これは研究で確かめられた方法ではなく、編集部の考えです。
- 体調が悪くなったら、そこで吸うのをやめます。対処はニコクラ・ヤニクラの記事にあります。
フレーバーの濃さ(ブロンドリーフとダークリーフ)でニコチン量がどう変わるかは、確かめられた資料が見つかっていないので、ここでは書きません。
日本の店では、どう考える?
国内の店で、ニコチン量がメニューに数字で書かれていることは多くありません。吸う前に、その店の1回が何mgかを知るのは難しいです。日本人を対象にニコチン量を測った研究は見つかっていません。
ニコチンを気にして選ぶなら、たばこ葉を使わない製品という選び方もあります。ただ、その場合も炭の煙の問題は残ります。法律上の扱いも製品ごとの個別の判断で、公的な見解は公表されていません。くわしくはノンニコチンのシーシャの記事と、用語のニコチンフリーにまとめています。
20歳未満は入店できません。身分証や例外の話は、何歳から?身分証は必要?にまとめています。
妊娠中や持病があるときは?
妊娠中や持病がある人が吸ってよいかは、この記事のニコチン量の数字からは決められません。分かっていることと分かっていないことは、妊娠中・喘息・持病でシーシャは?にまとめています。
主治医に相談するときは、「吸う頻度と1回の時間」「ニコチンの有無」「同席するだけか」を伝えるとよいです。全体の健康リスクの整理は、シーシャの健康リスクを科学的に整理するにあります。
この記事は医学的助言を目的としたものではなく、診断や治療の代わりにはなりません。


